Maki Nakamura
 

-1994-
滋賀県安土町/Azuchi Shiga,Japan

地域の文化を育むスペースとしての公園づくり
琵琶湖西の湖に面した安土町は、広々とした畠と山並ののどかな風景を楽しませてくれる。その山麓に一風変わった目立つ建物群が'94年に 完成した”安土桃山時代の象徴としての国際文化ゾーン”である。安土 は、400年前織田信長が天下統一の拠点とした地、そして、切支丹資料 にもある神学校を偲ぶ場所に、「文化は票にならない」という定説を ものともせず、辻悦蔵町長さんが在任4期を懸けて実現させたものである。 ここには、平成4年にセビリア万博に展示された安土城天主、文芸セミナリオ、 体育館、そして万博に因み命名された公園、スペイン広場がある。 このデザインは指名コンペ形式で大変嬉しい事に私の案に決定された。  
 緑の広場、人々広場、星の広場、子供の広場の4広場から成り、子供の広場 にはイタリア、スペイン、ポルトガルと天正少年使節団が訪問した国の形を 十二種の花崗岩で造り、地中海を白砂で現した砂場を作った。星の広場は イタリアの白大理石を使用し、12星座をレリーフにしたベンチで、これは 安土観音山に太陽と星の動きを観察した、日本最古の遺跡のある事に因んだ。 また、この郷の入り口には、町が友交親善を結んでいる15都市の旗を、 ベニシアン・グラスでモザイクした大理石日時計を配し、反対側には、 子供文字を浮彫りにしたアーチを作った。面積約5,000uの造成とこれ等の オブジェを作り、当初は各所に彫刻を設置し、芸術的な雰囲気を大人と子供達 が遊び散策する空間にと構想を練った。
 公園作りとは夢が次々と膨らむ楽しい仕事ではあるが、現実はその分予算も 膨らんでしまう辛い一面もある。資金をふんだんに使い豪華に作れば、体裁 も良く始めは町の宣伝になるかも知れない。しかし、400年もの歴史を継承 しつつ独自の文化を築こうとしている町に、その様な一夜漬けの上げ底式パッケージで良いはずがない。ヨーロッパ各地の公園を見ると、歴史的な処 が多いそうした町の特色を活かした美術展等で独自の文化を高め世界的な 文化観光都市として成功している例も少なくない。特に公共の公園というものは 地域の利用者の好みや用途を反映させる意味において住民参加の企画等でイメージ の完成に加担してもらう進め方は公共物への意識をも高める事に繋がってゆく。 この公園のための美術公募展等で毎年一点でも作品を購入しながら彫刻公園を 完成してゆこうという長期展望型の町作りの案に町長さんはもとより役場の 人々の賛同と努力が実り、'95年には初の国際彫刻公募展が開かれ町民参加の 国内外の評論家や建築家に選出されて彫刻噴水が今年完成した。長期に渡る 町作りは生かすも殺すも後を引き継いでゆく行政と町民のセンスにかかって来る。 文化とは時間のかかるものである。その発端を作るという事が芸術家として私 の出来ることであれば、それを利用して「オラが町」の文化的特徴を形成して ゆくのは行政と住民であってほしいと勝手な想いを抱くのであります。
                                             中村真木 ストーンテリアVol.44掲載

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